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[対抗文化の新都より vol.1-1]
ベルリン、オーガニックブームの先にあるもの。

さて今回は、ベルリンの食の話 – オーガニック事情について綴りたいと思う。 ベルリンはベジタリアンが多い、ヴィーガンが多い、オーガニック(有機栽培)大国で有名な都市の一つ。

絶対に友人の中にベジタリアンやヴィーガンが存在するし、オーガニック製品しか使わないという人も多い。どこのレストランやカフェに行っても、ベジタリアンやヴィーガンメニューはあるし、スーパーマーケットに行っても基本的なオーガニック製品は買える。

私も今では、食品や洗剤などの身の回りの生活用品はオーガニック製品を好んで買うことが増えた。 きっかけとしては、これまでのアパートのシェアメイト達がオーガニック製品を取り入れた環境に配慮した暮らしを実践していたこと、身近な友人たちとの会話の中で廃棄物、汚染などの環境問題、動物愛護の問題などの議論する機会が増えたことが挙げられる。

日常に環境問題に対する意識が根付いているため、逆に環境を意識しない行動をとったり、深く考えてこなかった自分の姿勢に気づくと、資本主義社会のど真ん中に浸かって環境破壊を推進している気持ちになり、恥ずかしいと感じることもある。環境に対する意識を日本にいた頃に比べ、日頃から持つようになった。

日常に溢れるオーガニックという選択肢

ヨーロッパではオーガニックのことをBioと呼ぶ。Bioは「農薬や化学肥料を使わず、環境ホルモンや遺伝子組み換えも除いた有機製法で製造された製品」を指す。

日本でもオーガニックブームもあり、オーガニック食品専門店やオーガニックマーケットなどがあるが、値段が高い、取り扱い食品の種類が少ない、専門店を渡りあるかなければいけないなど、オーガニックを生活に取り入れるはハードルが高い。 一方ドイツのBio専門のスーパーは、ベルリンの市内のどこでもあり、価格も手頃。

Bio製品を専門に取り扱っている会社と取引しており、野菜、肉、魚などの生鮮食品、調味料や穀物、乳製品やチーズ、ワインといった食品から洗剤などの生活用品、コスメ、衣服など通常のスーパーで手に入るものはなんでもある。Bio専門ではない一般のスーパーでも基本的なBio製品は手に入る。
オーガニックという選択肢は誰に対してもオープンになっているのがドイツならでは。ベルリンでは市民がライフスタイルを自分の思想に合わせ個々にデザインしている。

ベルリンにあるBio専門スーパーマーケットMAP。この他に個人が営むBio専門の小売店も多数存在する。

ドイツのオーガニック事情の基本 : Bio認証マーク

オーガニックと言っても、ドイツではその質や思想は実に多様化している。

多様化するオーガニックの質や思想を測る指標の一つがBio製品についているBio認証マークだろう。 Bio認証マークは、公正にオーガニック製品の普及させることを目的として、ドイツでは2001年に設けられた。製品に使われている薬品の使用制限や生産工程、生産環境、家畜の飼育方法などについての規定が定められている。この認証マークによって、消費者は透明度の高い情報を入手することができ、真摯にオーガニック製品を作っている生産者は保護される。
2011年には、EU連合がEU内におけるBio認証マークを制定をするなど、各種団体が独自のBio認証を定め、消費者の選択肢も多様化している。

ドイツでは、EU-Biosiegel(EU認証)、Deutsches Bio-Siegel(ドイツ認証)、Bioland、Demeter、Naturlandの5つの認証マークが有名である。

・EU-Biosiegel(EU認証)
2011年7月1日からEU内で生産された全てのBio製品に提示が義務づけられている。1年に最低1回、EU管理局の審査を受け、最低基準を満たす必要あり。ただし、5つの認証マークの中では一番認証基準が緩い。肉、魚などの生鮮食品、遺伝子組み換え商品、化粧品や医薬品には提示ができない。

・Deutsches Bio-Siegel(ドイツ認証)
2001年から始まり、2018年末時点で、5197企業(生産者)の77,841個の製品が認証を受けているドイツのBio認証。上記のEU認証マークへの併記のみ認められてる。ドイツ認証の商品は化学調味料、香料、着色料などが不使用、動物はBioの肥料や餌で育てられている、遺伝子組み換え原料の使用は全体の5%以下であれば認められている。

・Bioland
ドイツ最大のオーガニック農業団体Bioland e.V.よるこの認証は、900以上の生産者による5000以上の商品に掲載されている。Biolandは自然で肥沃な大地の促進、資源の再利用と自然のサイクルの循環を目的とした団体で、オーガニック認証基準は厳しい。

・Demeter
1924年に創設されたドイツで最古のオーガニック農業団体による認証で、確立された理念、自然保護の厳しい基準をクリアした約1500契約農家、約300の自然食品の生産者や卸売りのパートナーをドイツ全土に持つ。食品、衣類、化粧品などに使用されているが、特に食の分野においてはシュタイナー教育で有名なオーストリアの哲学者シュタイナーが提唱したバイオダイナミック農法を推奨しており、堆肥、薬草、ミネラルから生成された独自の農薬を使用。5つの中では最も厳しい認証基準を持つ。

*バイオダイナミック農法とは : オーストリアの哲学博士ルドルフ・シュタイナーが提唱した農法で、 作物本来がもつ「生命力」を重視した有機農法。 畑の土壌に関して一切の化学肥料や化学薬品(除草剤など)の使用を禁止し、 最低3年間の有機農法を続けていること、太陽や月、惑星や星座の運行のリズムに調和して、種まきや施肥、収穫という農作業を行うなどが求めらる。 この方法により、本来の生命力を持った強い植物が育つとされる。

・Naturland
ドイツで2番目に大きいオーガニック農業団体Naturland e.V.による認証で、森林・水源保護における視点から食品、繊維・布製品、化粧品などに使用される。認証の基準はDemeter、Biolandよりは緩く、EU認証よりは厳しいと言える。

確認証基準比較(参照サイト)

基準の比較リストの基本的な項目の他にも細かな基準を各認証マークは持っている。消費者は環境配慮や健康志向、動物愛護など異なる観点から多様な関係性をオーガニックと築いているため、認証マークの条件を知ることで自分の考え方やライフスタイルに合う選択が可能となる。

下の写真は、近所のオーガニックスーパーマーケットDenn’。各メーカーがオーガニックについてパッケージで色々書くよりも、信頼のある認証マークを載せる方が基準が目安になるので消費者にとっては情報の透明度が高い。店内ほぼ全ての商品に表記されている認証マーク、下記はほんの一例に過ぎない。

お茶、コーヒ、シリアル、穀物などの量り売り。消費者は容器を家から持ってくる。
パスタの量り売り
Demeter認証済みの商品書体は統一されている。書体をレバDemeter認証商品と分かる。
日本で馴染みのオーガニックコスメ、WELEDAのロゴもDemeterの書体
コスメ用品もBio
食品だけでなく生活用品もBioが充実している

暮らしの中に浸透するオーガニック製品。では実際、その市場はどんな成長を遂げているのだろう?
次の記事では、拡大し続けるオーガニック市場の現状を探る。

TEXT BY SAKI HIBINO

ベルリン在住のプロジェクト& PRマネージャー、ライター、コーディネーター、エクスペリエンスデザイナー。Hasso-Plattner-Institut Design Thinking修了。デザイン・IT業界を経て、LINEにてエクペリエンスデザイナーとして勤務後、2017年に渡独。現在は、企画・ディレクション、プロジェクト&PRマネージメント・執筆・コーディネーターなどとして、アート、デザイン、テクノロジーそしてソーシャルイノベーションなどの領域を横断しながら、国内外の様々なプロジェクトに携わる。愛する分野は、アート・音楽・身体表現などのカルチャー領域。アート&サイエンスを掛け合わせたカルチャープロジェクトや教育、都市デザインプロジェクトに関心あり。プロの手相観としての顔も持つ。

Published inBerlinEurope対抗文化の新都より